やもめ暮らしのお父さん

私が保育士をはじめたころでした。 やっとのことで仕事が決まり、意気揚々と仕事に励んでいた時のこと。
毎日、スーツ姿でまだ小さい子供を預けに来るお父さんに気が付きました。
子供はすっかりお父さん子で離れるときはしがみついて離れません。
いつも小奇麗にしており、しっかり生活しているんだという感じでした。
まだ30代の前半に見えました。
そのときから、私はこのお父さんに恋をしてしまったのです。
お子さんは素直でいい子でした。一人遊びも上手にできるし、ご飯も残さず食べます。
父親のしつけのよさを感じました。
お子さんもだんだん私に慣れてくれ、家でのことを話してくれるようになりました。
お父さんとここへいった、車に乗った、公園へ行った。
ほほえましい話に、いつも私はそのお父さんの顔を思い浮かべていました。
かといって、こちらから話しかける勇気が出ず、日々は過ぎていきました。
最近、ぽつりとお子さんが、「ママが欲しい」と言っているのを聞きました。
私は自分の気持ちを見透かされたような気がして、どきりとしたものです。
これからも、このお子さんの面倒を見ながら、少しずつ勇気をたくわえて、いつか食事にでも誘えたらいいと思います。





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